大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大分地方裁判所 昭和55年(わ)184号 判決 1980年9月10日

本店所在地

大分県佐伯市四、五九二番地の一

菅政建設株式会社

右代表者代表取締役

菅誓一郎

本籍

大分県南海部郡上浦町大字浅海井浦二、九三〇番地

住居

大分県佐伯市一一、七六六番地の六四(興人区)

会社役員

菅誓一郎

昭和一一年一月一日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官岩永建保出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人菅政建設株式会社を罰金一、〇〇〇万円に、被告人菅誓一郎を懲役一〇月に処する。

被告人菅誓一郎に対し、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人菅政建設株式会社は大分県佐伯市四、五九二番地の一に本店を置き建設業を営むもの、被告人菅誓一郎は被告人会社の代表取締役として被告人会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人菅誓一郎は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、被告人会社の工事収入金を除外し或いは架空材料費を計上するなどし、これにより得た資金を架空名義又は無記名の定期預金に預け入れるなどの不正手段により所得の一部を秘匿したうえ

第一  昭和五一年五月一日から昭和五二年四月三〇日までの事業年度において、被告人会社の所得金額が一億一、二一九万九、二一〇円、これに対する法人税額は四、二六六万三〇〇円であるにもかかわらず、昭和五二年六月二八日、大分県佐伯市三、二七六番地の三所在の佐伯税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が七、六四四万九九八円で、これに対する法人税額は二、八三六万二、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額四、二六六万三〇〇円と右申告税額との差額一、四二九万八、〇〇〇円を免れ

第二  昭和五二年五月一日から昭和五三年四月三〇日までの事業年度において、被告人会社の所得金額が一億九、九四六万五、七九三円、これに対する法人税額は七、七三二万二、九〇〇円であるにもかかわらず、昭和五三年六月二一日、前記税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一億三、八七〇万九、四五九円で、これに対する法人税額は五、三〇二万四、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額七、七三二万二、九〇〇円と右申告税額との差額二、四二九万八、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人菅誓一郎の当公判廷における供述

一  被告人菅誓一郎の大蔵事務官に対する質問てん末書一三通及び検察官に対する供述調書二通

一  登記官作成の登記簿謄本

一  大蔵事務官作成の査察官調査事績書一二通(甲第二一号、甲第二六号、甲第六八号乃至甲第七一号、甲第七三号、甲第七五号、甲第七七号、甲第七九号、甲第八三号、甲第八四号)

一  中島健児、成迫長四郎、矢野和彦、大溝博文、山崎芳生(七通、甲第四二号、甲第四三号、甲第八一号、甲第一〇二号乃至甲第一〇五号)、菅タイ子(二通)、有田久美子(二通)、大原みどり、児玉増信、軸丸友孝、大鶴勝美、児玉豊彦、松本信敏、盛武久文、本田菅夫、山田由彦、石田徳男、松田重幸、児玉一彦、前田通明、黒岩万太郎(二通、甲第六六号、甲第六七号)、大久保八千代(甲第七四号)及び高宮妥の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一  菅タイ子、清田ツヤ子、黒岩万太郎及び山崎芳生(甲第八六号)各作成の上申書

一  菅タイ子、有田久美子、大原みどり、児玉増信、本田菅夫、黒岩万太郎及び山崎芳生の各検察官に対する供述調書

一  押収してある法人税決議書一綴(昭和五五年押第五四号の1)、賞与支払明細書一綴(同押号の8)、精算明細書一綴(同押号の11)、事績等綴一綴(同押号の12)及び工事請負契約書一綴(同押号の13)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲第一号)

一  被告人菅誓一郎作成の確定修正申告書謄本(甲第八号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査事績書二通(甲第一五号、甲第七六号)

一  吉富辰男、矢野秀孝、山崎芳生(甲第一八号)、森田秀雄及び大久保八千代(甲第二〇号)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一  押収してある総勘定元帳一冊(昭和五五年押第五四号の2)、伝票綴四綴(同押号の4乃至7)及び賃金精算明細書一綴(同押号の9)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲第二号)

一  被告人菅誓一郎作成の確定修正申告書謄本(甲第九号)

一  大蔵事務官作成の査察官調査事績書三通(甲第八二号、甲第九七号、甲第九八号)

一  児玉澄夫、石田カヨ、黒岩万太郎(甲第八八号)、山崎芳生(二通、甲第八九号、甲第九〇号)、大久保八千代(二通、甲第九一号、甲第九二号)及び早瀬栄之の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大久保八千代の検察官に対する供述調書

一  小野喜久、三浦重吉、大串敏晴、檜垣政雄、高治誠、青木俊男及び山本伝各作成の証明書

一  山崎芳生作成の上申書(甲第八五号)

一  押収してある総勘定元帳一冊(昭和五五年押第五四号の3)、賃金精算明細書一綴(同押号の10)、伝票三綴(同押号の14乃至16)及び領収書一綴(同押号の17)

(法令の適用)

判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人菅誓一郎については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で罰金一、〇〇〇万円に、被告人菅誓一郎については同法四七条本文一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 永松昭次郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例